ラノベレビュー #2「迷い猫オーバーラン!」
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感動系美少女ゲームのノリが好きな人向け | ||||||||||
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概要
2010年4月よりテレビアニメ化が決定している同タイトルの原作第一巻。著者の松智洋氏はこれがライトノベル初作品となるが、新人というわけではないようだ。本作のあとがきで普段は別ペンネームでゲームやアニメ、漫画の原作などを手がけているとあり、実際テレビアニメ『クイーンズブレイド 流浪の戦士』ではシリーズ構成としてクレジットされている(よしもときんじ氏と連名)。脚本家がライトノベルを手がけることは過去にもある。例えば同スーパーダッシュ文庫では川崎ヒロユキ氏が『はっぴぃセブン』を執筆していた。ちなみに『はっぴぃセブン』も2005年秋にテレビアニメ化されている。
本シリーズの発刊ペースは早く、2008年10月末の第1巻から2009年11月末の時点で既に第7巻を数える。概ね2ヶ月に1冊程度の発刊ペースだ。『迷い猫オーバーラン!』のアニメ公式サイトによればテレビアニメ版のシリーズ構成も松智洋氏が担当することになっており、氏の執筆速度は相当早い部類であると思われる。
イラストのぺこ氏は美少女ゲームの原画家だ。ブルームハンドルというブランドで、これまでに『はぴとら』『はぴとら外伝』の2作品の原画を担当している。
またテレビアニメ化に先駆け、コミック版がジャンプスクエアで連載されている。作画は『To LOVEる -とらぶる-』の矢吹健太朗氏が担当。矢吹健太朗氏の描く少女の可愛さには定評があり期待が高まる。
あらすじ
都築巧の家は洋菓子店『ストレイキャッツ』を営んでいる。従業員は店長で姉の乙女と、巧の幼なじみでバイトの芹沢文乃、そして巧の3人だけ。しかもただ一人のパティシエールである乙女の腕前は微妙で経営状態はかんばしくない。にも関わらず人助けが趣味な乙女は、素性のわからない美少女を拾ってきてしまい巧と文乃は唖然とする。個性的な面々に騒がしい日々を送る彼らだが、その過去にはある秘密があったのだった。
総評
自分も含め、多くの人はテレビアニメ化によって本作に興味を持つことになると思われるが、テレビアニメを先取りしたい場合を除いては、アニメ版や漫画版を最初の情報源とする方が幸せだろう。自分は2巻以降未読だが、シリーズ中本作に限って言えば文章上のミスが多く、気持ちよく読めるとは言い難い。作品の方向性は、一言で言えば感動系美少女ゲームのノリである。人の生死に関わるようなストーリーではないが家族をテーマとしており、感動系美少女ゲームをプレイする人であればKeyの『CLANNAD』などと重なる部分を感じるだろう。
本作を高く評価できるかどうかは、偏に主人公『都築巧』に感情移入できるかという点にかかっている。幼なじみの『芹沢文乃』と学園理事長の娘『梅の森千世』はツンというよりサディストであり、特に文乃の言葉は読者がよほどのマゾヒストでなければ不快に思うであろう汚い言葉だ。そこを克服できるのであれば、感動系としては妥協点を与えられる結末を評価することができ、また続刊への期待も高めることができる。
項目別評価
イラスト巻頭には見開きサイズのカラーイラストが2点。少々寂しいが1枚は主要登場人物が勢揃いしたイラストなので、名前とイメージを一致させるのに役立つ。
美少女ゲームのような綺麗な塗りの表紙とは対照的に、本編イラストはシンプルな塗りであまり力が入っていないように感じられてしまう。キャラクターの線に強弱が乏しくベタがない為メリハリがない平坦な印象だ。ぺこ氏はイラストレーターであるため漫画的な技法を用いていないのではないかと推測される。
キャラクター個性があるというよりも一癖も二癖もあると言った方が適切なキャラクターの中で、主人公の幼なじみ芹沢文乃の口癖「二回死ね!」は特にインパクトがある。しかし主な読者層が中学生であろうライトノベルにおいて頻繁に「二回死ね!」と叫ぶヒロインは若者の教育上、正直どうかと思ってしまったのも事実だ。
読みやすさ話が進につれ視点は主人公の一人称がメインとなっていくが肝心の導入部分で悪い印象を受けることは避けられないだろう。
文章力文章力が低いというより、きちんと推敲されていないのではないだろうか。自分が購入した第12刷においてもこういったミスは修正されておらず、出版社側が問題を認識しているかどうかも疑問だ。
ストーリー主人公達の境遇と愛情から涙を誘うという試み自体は美少女ゲームにおいてやり尽くされたものであるが、本作で初めて触れるという読者に対しては十分に機能するストーリーだと思われる。


かわいい
空気の読める主人公