ラノベレビュー #3「神さまのいない日曜日」
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地に足の着いた大賞らしい作品 | ||||||||||
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概要
第21回ファンタジア大賞において大賞を受賞した作品だ。審査員の評価は全てA以上と全会一致で大賞に決定した。ファンタジア大賞で大賞作品が出るのは今回を入れて5回目である。応募総数に差があるので一概に他の小説大賞と比較はできないが、 一定以上のクオリティの作品でなければ大賞を選出しないという編集部の意思を汲み取れる。
「大賞」の帯は安心して手に取れる保証であると言える。
あらすじ
15年前その世界は神様に見捨てられた。新たに人は生まれず死者が死なない悪夢のような世界。
その世界で死者に真の安らぎを与えることができる存在”墓守”。アイは世界を見捨てた神様が人に与えた最後の奇跡である”墓守”の一人だった。優しい村人に囲まれて過ごすアイであったが、ある日ハンプニーハンバートと名乗る少年が現れ彼女の世界は一変する。
死者を狩り続けるハンプニーハンバート。その名は母から聞いたアイの父親の名であった。
総評
概ねシリアスなストーリーで、この一冊で一応の区切りもついており小説大賞応募作品にふさわしい完成度の高い作品に仕上がっている。
”墓守”という単語から同時期にスニーカー大賞を受賞した『シュガーダーク』の地味な内容を思い浮かべてしまったが、本作からはシュガーダークほどは地味な印象は受けない。
しかしながら墓守という職業の性質上、人の生と死についてファンタジー要素を加えて描いたという共通点はある。ファンタジー要素が加えられたと言ってもあるのは”人が生まれず死者は死なない”という世界の設定と、その世界で唯一死者を眠らせることができる”墓守”という存在の二点のみだ。 しかしこのたった二つの設定は効果的に機能している。序章はこれらの説明と物語の根幹関わる伏線が張られているが、ここで興味を持つことができれば最後まで一気に読めてしまうだろう。 序章はほんの15〜6ページなので、立ち読み可能な本屋であれば序章だけ読んでから購入を決めるといい。
登場人物はそれほど多くなく萌えの対象となるのは主人公の「アイ」くらいであるが、作品の方向性、限られたページ数、登場人物の役割を考えれば妥当な人数である。 第二巻を執筆中のようなのでキャラクターの補充はそちらに期待したい。
キャラクターは皆良くも悪くも物分りがよく達観している印象だ。例えばアイが命乞いをするシーンがあるが”なるべく哀れに聞こえるように”と説明されており、理性を捨てて必死になっているようには取れない。 12歳とは思えない冷静さだが、アイの生い立ちや”人が生まれず死者は死なない”という異常な世界であることを考慮すればそういうものなのかもしれない。
ギャグ要素や恋愛要素やパズル的要素は少ない。神様に見捨てられた世界で生きる人々の心理状態がどのようなものか。 そういった想像と純粋で真っ直ぐなアイに魅力を感じるのであればまずまずの感動と続刊への期待を与えてくれるだろう。
項目別評価
イラスト担当の茨乃(しの)氏はイラストレーターで雑誌で表紙や挿絵などをいくつか手がけている。以前Pixivで氏のイラストを見たことがあるがそちらも色彩感覚と描き込みに魅力を感じる作品だった。
カラーイラストだけであれば4〜5点を付けたいところではあるが、本文モノクロイラストに関してラフさが目立ち、またモノクロであるが故に持ち味が生かされていないので残念ながらこの評価となった。
手元の『デジ絵SAIスーパーテクニック(株式会社ソーテック)
キャラクター作者の性格故か会話の内容はともかく、二人とも根の部分は真面目で誠実で人のことをよく考えて行動し、思いやりがある優しい人物たちであると思う。
読みやすさ
文章力余計な文章はなく、必要なものが必要なだけきっちり抑えられている印象。
ストーリー”神様に見捨てられた世界”という設定はそこまで新奇なものではないが人の内面を描く上で活きている。

