11月29日 PhotoshopのCMYK設定

次の同人誌から印刷所を変えようかと思っています。
印刷所を変える時に一番問題になるのが、カラー表紙の印刷結果の違いです。
厳密なカラーマッチングをするには機材も情報も足りていませんが、PhotoshopのCMYK作業スペースの違いだけでも結果が大きく異なります。

PhotoshopにおけるCMYK作業スペースには、大きく2つの役目があります。
1つは実際に印刷される色を画面上でシミュレーションすること。
もう1つは色をどのようにCMYKに分解するかということです。

ここではカラープロファイルを利用する場合とカスタムCMYKを利用する場合それぞれで設定例を紹介します。

印刷業に直接関わりのない同人絵描きがネットの情報を元に調べたことなので、間違い等あるかもしれません。間違いを見つけたらコメントやメールで教えていただくと助かります。

■カラープロファイルを利用する場合

同じカラープロファイルを使っても印刷所によって印刷結果は変わるでしょう。
更に言えば印刷機によっても変わるし、インキや紙の種類によっても変わります。
印刷機のコンディションなどによっても左右されることを考えると、最終的な色調整は印刷機のオペレーターに任せる以外にありません。
しかし標準的なカラープロファイルを作業用スペースとすることで、大きなブレは解消されるはずです。

具体的にどのカラープロファイルを指定すべきかというと、2007年現在においてオフセット印刷の標準的なカラープロファイルは「Japan Color 2001 Coated」です。
印刷所にもよりますが、ひとまずこれを指定しておくのが無難かと思われます。

他の標準的なプロファイルと比較すると次のようになります。

プロファイル名印刷機インキ用紙インキ総使用量
Japan Color 2001 Coated枚葉印刷機日本の標準インキコート紙 350%
Japan Color 2001 Uncoated枚葉印刷機日本の標準インキ上質紙またはマット紙310%
Japan Standard v2日本の標準インキ出版用コート紙300%
Japan Color 2002 Newspaper新聞輪転機日本の新聞用標準インキ標準新聞紙240%
Japan Web Coated(Ad)オフセット輪転機コート紙300%

同人誌の印刷は枚葉オフセット印刷なので輪転機用の「JapanColor 2002 Newspaper」と「Japan Web Coated(Ad)」は無視して構いません。

「Japan Standard v2」はPhotoshop CS2以前の標準プロファイルでしたが、インキ総使用量が少ないことなどから最近はあまり使われていないようです。
インキ総使用量はCMYK各色の合計で最大で400%、一般的な総使用量は300~360%です。
インキの総使用量は多い方がシャドー部の表現が高くなりますが、乾きが遅くなり紙を重ねた時に裏移りするので360%以内に収めるべきです。

用紙ですがJapan Paperではアート紙、マットコート紙、コート紙、上質紙の4種類が定義されています。
例えばPICOのV1セットの表紙用紙である「アートポスト」はポストカードなどに使われるアート紙で、コート紙より高品質です。
「Japan Color 2001 Coated」はコート紙に準拠したプロファイルですが、より品質の高いアート紙で利用しても問題はないかと思います。

「Japan Color 2001 Uncoated」はマット紙に準拠していますが、インキ総使用量が310%に抑えられていることを考えると、アート紙のマットPP加工で利用する場合も「Japan Color 2001 Coated」を利用した方がよいのではないかと思います。
ただマットPP加工はその性質上発色が抑えられるので、原稿作成時に考慮する必要があるかもしれません。

なおPhotoshop CS2では標準値として「Japan Color 2001 Coated」が設定されています。

■カスタムCMYKを利用する場合

カスタムCMYKを利用するには印刷に関する知識が若干必要になります。
知識がない場合はカラープロファイルを利用した方が安全ですので、読み飛ばしてください。

[印刷インキ設定]
・インキの色特性
東洋インキ(コート紙)を選択します。
日本のインキメーカーとしては大日本インキ(DIC)と東洋インキの2社が大きいですが、両社でインキの色特性はほとんど変わらず大日本インキの設定は壊れているとの情報もあるので東洋インキ(コート紙)が無難かと思います。

・ドットゲイン
オフセット印刷でもインクジェット印刷でも、CMYKの細かい点ですべての色を表現するという点では変わりがありません。
オフセット印刷ではこの点が網点状(トーン)になっていることは、印刷物をスキャンしてみればわかると思います。
この網点が実際印刷した結果、物理的または光学的に太ることをドットゲイン言います。

個人的にカスタムCMYKにおいて、このドットゲインの項目が最重要だと考えています。
実際に原稿を開いてプレビューにチェックした状態でドットゲインを変更してみるとわかるのですが、ドットゲインが10%変われば画面上のイメージが大きく変わってしまいます。
実際の印刷よりドットゲインが小さい状態で原稿を作成した場合、画面で確認した時より暗くなりますし、実際の印刷よりドットゲインが大きければ明るくなってしまいます。

ドットゲインの設定は対象となるインキや紙によって大きく異なります。
塗工紙であるコート紙などでは15%程度、上質紙では20%程度のようです。
ドットゲイン量は中間部で特に大きくなります。ハイライトやシャドー部では上記の値より小さくなります。
画面上でより正確なシミュレーションを行うためには、ドットゲインカーブで入力すべきです。


[色分解オプション]
印刷の原理的には色の三原色であるシアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)の配合比率を変化させればすべての色を表現できるはずですが、実際にはCMYだけでは完全な黒を表現できません。CMYだけで表現された黒はこげ茶色になります。
これはインキに不純物などが含まれる関係で、純粋な色のインキは存在しないからです。
そこで黒(BlacK)を加えて黒を表現するわけですが、黒インキにはインキの総使用量を抑える役目もあります。
どのように黒インキを使うか設定するのが色分解オプションです。

・色分解の種類
色分解の種類としてGCRとUCRがありますが、通常はGCRを選択すれば問題ないと思います。
GCRもUCRも、CMYの3色が等量重ねられたグレーの部分を黒に置き換えることに違いはないのですが、UCRは50%以上の中間からシャドー部に対して作用するのに対し、GCRは全域で作用します。

・黒版生成
GCRの場合どのように黒に置き換えるかを黒版生成で設定できます。
同人誌の表紙に限った話では肌の色に黒版が乗ると鮮やかさが失われるので、ハイライト部での黒版生成を抑え目にした軟調を選んだ方が鮮やかさが失われないかと思います。
逆に黒のグラデーションの多い原稿では、標準を選んだ方が黒の表現力が上がるかと思います。

・黒インキの制限
黒インキの制限は原稿の作成の仕方によって変わってきますが、概ね90~100%の間で設定します。
100%にする利点は黒版のみの文字などを挿入できることです。
タイトル等ではCMYの混ざっている黒より黒版のみ100%の黒の方がシャープに表現されます。
ただ逆に人物等ではシャドーが強くなりすぎるかもしれません。そのような場合は90%などに抑えます。

・インキの総使用量の制限
オフセット印刷の一般的なインキの総使用量は300~360%なのでこの間で設定します。
実際の印刷では概ね「Japan Color 2001 Coated」で定義されている350%前後になるようです。

・UCA(下色追加)の量
基本的に0%で構いません。
UCAはUCRと逆でシャドー部にCMYを追加して濃度を上げます。

■その他気をつけること
CMYKに関係したところで思いついたことを列挙しておきます。

[RGBの作業カラースペース]
直接CMYKで原稿を作成する場合は関係ありませんが、RGBで作った原稿をCMYKに変換する場合に重要です。

標準的なRGBのカラースペースはsRGBですが、PhotoshopではAdobe RGBを指定するのが良いかと思います。
ほとんどのCMYK色はsRGBで表現できますが、CMYKで表現できてsRGBでは表現できない色というのも存在します。
Adobe RGBはCMYKで表現できる色を網羅した設計ですので、こういった色をそのままCMYKに変換できます。

しかしAdobe RGBに対応したモニタは高価なので買えません......。
原稿作成時に確認できない色を印刷できることにどれだけ意味があるのかは疑問です。
とはいえプロファイルの変換が起こるのであれば、ソースとなるデータは可能な限り広い色域で作られるべきだと思います。

[カラープロファイルを埋め込まない]
印刷所にもよると思いますが、カラープロファイルは基本的に埋め込まない方がトラブルが少ないと思います。
大抵の場合CMYK→CMYK変換によって問題が起きます。というか起きました(T_T)

[簡易色校正]
私は色校正をしたことがありませんが、色校正機を利用した場合、実際の印刷とドットゲインカーブの食い違いが起きるようです。
むしろドットゲインの再現においては、インクジェットプリンタで印刷した方が実際の印刷に近いと言えます。
このようなことから入稿時にサンプルとして、インクジェットで印刷した見本をつけることはドットゲインの大幅な食い違いを避けるのに有効かと思われます。
インクジェットの印刷には、実際にオフセット印刷する用紙に近いコート紙などを利用するべきでしょう。

[シアン抜き]
入稿時に同人誌の印刷を行っている印刷所でよく聞かれるのが「シアンを抜きますか?」という質問です。
アニメ調の塗りでは肌の色にシアンやブラックが混入すると画面で見るよりくすんで見えるので、その分シアンを2~3%抜くことでくすみが抑えられるという原理です。
必ずしも抜く必要はなく、絵柄や想定しているイメージによって使い分けると良いと思います。

メニューのイメージ→色調補正→トーンカーブでシアンチャンネルの入力の項目に2~3を設定することでシアン抜きができます。


[参考文献]