11月 6日 同人誌を取り巻く状況について考える

更新できなくて申し訳ないです。普通に仕事してました。
ここ数ヶ月のうちに同人誌を取り巻く状況が目まぐるしく変化しているのは、みなさんご存知のことと思います。
その変化の中で、末席の同人絵描きである自分はどう対応してばいいのか。少しだけ真面目に考えてみました。

【同人誌の抱える問題】
同人誌はその表現に関して複数の問題を抱えてるため、話がややこしく混乱します。
具体的に直面している問題は、

・淫行条例の問題(青少年健全育成条例)
・わいせつ図画頒布の問題(刑法第175条)
・児童ポルノ問題(児童ポルノ法)
・著作権の問題(著作権法)

の4つです。

[淫行条例の問題]
今回の都産貿をはじめとした即売会への規制は淫行条例の問題になります。
青少年健全育成条例は地方自治体によって定められていますが、18歳未満へのわいせつな行為を規制するものです。
18歳以上にエロ同人誌を頒布すること自体は条例に抵触しませんが、年齢確認を行わない現状の即売会では18歳未満の参加者が購入してしまう可能性は否定できません。またポスターや同人誌の表紙等が18歳未満の目に触れる可能性も高いです。

個人的にはこの問題はゾーニングにより解決するものだと思います。
具体的な対策として

・身分証明書を確認して18歳未満の入場を禁止する
・会場を区切って18歳未満が入場できない区域を作る

などが考えられます。
主催者への負担が増えるので場合によっては現実的でないかもしれませんが、実際に11月3日に台東館で開催された 「クイーンズコロシアムII」及び「年増園」では18歳未満の入場を全面的に禁止したようです。
また同日自分も参加した「スキマフェスティバル2007」でもポスター等の修正が求められました。
同人誌への18禁表記の徹底も、サークル参加者1人1人が意識しなければならないでしょう。

しばらくはこうした自主規制を強める動きが続くのでしょうが、一番の懸念はコミックマーケットです。
事実上現在の開催形態では18禁表記以外のゾーニングは不可能ですので、年末のコミケではこれまで以上に強力な見本誌や展示物のチェックが行われると予想できます。前回までは注意で済んでいたものが販売停止になるケースが増えるでしょう。

準備会や印刷所が規制を強めても、未成年に頒布されてしまう可能性は否定できません。
それを問題視する投書が警察や政治家等に送られてしまったら、コミケの会場移転や開催中止も現実のものになるかもしれません。


[わいせつ図画頒布の問題]
まだ記憶に新しい2002年に起きた松文館事件の問題です。
松文館裁判の詳細についてはまとめサイトがあるようなのでそちらを参照してください。

ここで争点になったのはビューティ・ヘア氏の「蜜室」がわいせつ図画であったかどうかですが、蜜室が他のエロ漫画や実写に比べてエロかったかどうかはもはや問題になりません。
今日の日本の倫理観・社会通念において「エロ」は恥ずべきことであるというモラルがあり、建前上は大手を振って認めるわけにはいかないからです。
モラルが存在するから中学生はエロ本をベッドの下に隠すし、親に隠れてオナニーするし、親も子供が寝静まってから夫婦の営みをするわけです。
わいせつ物の定義が曖昧なのも、その社会通念という建前と生物としての本音の矛盾を吸収するためであると個人的には考えています。

松文館事件の本当の問題は、事件のきっかけとなった政治家への投書の存在そのものにあるのではないでしょうか。
投書が寄せられれば対応しないわけにはいきません。
先の即売会への規制も匿名の電話が発端であったという噂もあります。

投書が頻繁に寄せられるような社会では倫理的に問題があるのはわかりますが、恐ろしいのはたった1通の投書から問題に発展していく可能性が高いことです。メディアの煽りも一役買っているでしょう。
この問題を自主規制だけで未然に防ぐのは不可能に近い気がします。
問題提起する側が軽い気持ちや一時の正義感に流されず、本当に通報すべきことなのか同人業界の行っている取り組みをよく理解してから行うべきではないでしょうか。


[児童ポルノ問題]
社会通念という考え方において特に問題となるのが児童ポルノの問題です。
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」では実在する児童の人権を守ることを目的としているため、現在のところイラストや漫画における架空の児童には適用されません。
ですからエロ漫画で堂々と中学生と描いてあっても、今のところは抵触していません。

しかし法改正で児童ポルノ法の適用を架空の児童にまで広げようという動きが、女性議員を中心に起こっているのはご存知のことかと思います。
おまけに単純所持も違法となれば、世のオタクの多くは処罰の対象となるでしょう。

架空の児童が性の対象となることが具体的な悪影響を及ぼしているという統計データはおそらく存在しないと思います。
すべては社会通念という倫理を振りかざした、建前の言い分です。建前が理想的で正しくあるべきなのは当然なので、世論を味方にすれば法改正で織り込まれることは十分ありえます。


[著作権の問題]
そしてもっとも根深いのが著作権の問題です。
一部のオリジナル創作を除き、同人誌の多くは二次創作です。サークル側もグレーゾーンであることは承知の上です。

それでも成り立っているのは、著作者の実害がほとんどないことと、ファン活動の一環として相乗効果が期待できること、訴えることで企業イメージが下がること、そして著作権が親告権であるということです。
著作者から訴えられない限りは黙認される現状が、同人誌業界の根源を支えてると言って間違いありません。

その著作権法の非親告化の議論は極めて大きな問題であることを、同人作家は認識しなければならないと思います。


【なぜ問題視されるのか】
そもそもなぜ問題視されているのでしょうか。
確かに行き過ぎた表現や自主規制の緩みはあったと思いますが、今までそういうことがなかったわけでもありませんし、解決できない問題だとも思いません。特にコミケのような大規模な即売会や書店委託においては、商業誌より厳しい規制であることは肌で感じています。(こな☆かがも書店から尿道の修正を要求されました)
そればかりか青少年等に与える悪影響を具体的な数字で見たこともありませんし、むしろ少年犯罪は減っているくらいです。
問題視されるのは問題にしたい人や団体がいて、問題にすることで利益や名声を得ることができるからではないでしょうか。

著作権法の見直しも「年次改革要望書」によるアメリカからの要望に基づくものです。(郵政民営化も年次改革要望書の成果といえます)
児童ポルノ法もストックホルム会議の成果であるし、諸外国からの圧力というのは無視できません。
「国際的に足並みを揃える」とは言いますが、風土が違う以上文化や性に対する考え方が違うのは当然です。
日本の精神的な国際競争力の弱さを露呈していると言えるかもしれません。


【どう対応すればいいか】
過去の事例を紐解いてみても、現在の風潮は自主規制強化の方向に向かっていることは明白です。
ここで波風を立てれば規制賛成派の力を強めることになるでしょう。最大限の自主規制が必要だと考えています。
冬コミを間近に控えた今も状況は刻々と変わっています。
他人事と思わずに、各個人が逐次状況を把握し柔軟に対応していく必要があると思います。

当サークルも社会通念から見れば十分にアブノーマルな(本人はギャグのつもりですが)性表現をしていますので、冬コミでは自粛したいと思います。

ではもし法改正されたら、表現の自由は完全に奪われてしまうのでしょうか?
規制される表現があれば、その規制から新しく生まれる表現もあるというのが個人的な考えです。
人が表現の自由を求める以上、その多様化を阻むことはたとえ法であっても不可能なはずです。
ですから実はそんなに悲観してはいません。