2010年1月アーカイブ




神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)
神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)入江君人

富士見書房 2010-01-20
売り上げランキング : 328

おすすめ平均 star
star独特の雰囲気
star個人的には☆5
star読み切り完結タイプ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

当サイトのおすすめ度
★★★★☆
地に足の着いた大賞らしい作品







イラスト★★★☆☆
キャラクター★★★★☆
読みやすさ★★★★★
文章力★★★★★
ストーリー★★★★☆

概要
 第21回ファンタジア大賞において大賞を受賞した作品だ。審査員の評価は全てA以上と全会一致で大賞に決定した。
 ファンタジア大賞で大賞作品が出るのは今回を入れて5回目である。応募総数に差があるので一概に他の小説大賞と比較はできないが、 一定以上のクオリティの作品でなければ大賞を選出しないという編集部の意思を汲み取れる。
 「大賞」の帯は安心して手に取れる保証であると言える。

あらすじ
 15年前その世界は神様に見捨てられた。新たに人は生まれず死者が死なない悪夢のような世界。 その世界で死者に真の安らぎを与えることができる存在"墓守"。アイは世界を見捨てた神様が人に与えた最後の奇跡である"墓守"の一人だった。
 優しい村人に囲まれて過ごすアイであったが、ある日ハンプニーハンバートと名乗る少年が現れ彼女の世界は一変する。
 死者を狩り続けるハンプニーハンバート。その名は母から聞いたアイの父親の名であった。

総評
 概ねシリアスなストーリーで、この一冊で一応の区切りもついており小説大賞応募作品にふさわしい完成度の高い作品に仕上がっている。 "墓守"という単語から同時期にスニーカー大賞を受賞した『シュガーダーク』の地味な内容を思い浮かべてしまったが、本作からはシュガーダークほどは地味な印象は受けない。 しかしながら墓守という職業の性質上、人の生と死についてファンタジー要素を加えて描いたという共通点はある。

 ファンタジー要素が加えられたと言ってもあるのは"人が生まれず死者は死なない"という世界の設定と、その世界で唯一死者を眠らせることができる"墓守"という存在の二点のみだ。
しかしこのたった二つの設定は効果的に機能している。序章はこれらの説明と物語の根幹関わる伏線が張られているが、ここで興味を持つことができれば最後まで一気に読めてしまうだろう。
序章はほんの15~6ページなので、立ち読み可能な本屋であれば序章だけ読んでから購入を決めるといい。

 登場人物はそれほど多くなく萌えの対象となるのは主人公の「アイ」くらいであるが、作品の方向性、限られたページ数、登場人物の役割を考えれば妥当な人数である。
第二巻を執筆中のようなのでキャラクターの補充はそちらに期待したい。

 キャラクターは皆良くも悪くも物分りがよく達観している印象だ。例えばアイが命乞いをするシーンがあるが"なるべく哀れに聞こえるように"と説明されており、理性を捨てて必死になっているようには取れない。
12歳とは思えない冷静さだが、アイの生い立ちや"人が生まれず死者は死なない"という異常な世界であることを考慮すればそういうものなのかもしれない。

 ギャグ要素や恋愛要素やパズル的要素は少ない。神様に見捨てられた世界で生きる人々の心理状態がどのようなものか。
そういった想像と純粋で真っ直ぐなアイに魅力を感じるのであればまずまずの感動と続刊への期待を与えてくれるだろう。




迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!! (集英社スーパーダッシュ文庫)
迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!! (集英社スーパーダッシュ文庫)松智洋

集英社 2008-10-29
売り上げランキング : 1880

おすすめ平均 star
starかわいい
star空気の読める主人公
starほう。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

当サイトのおすすめ度
★★★☆☆
感動系美少女ゲームのノリが好きな人向け







イラスト★★★☆☆
キャラクター★★★☆☆
読みやすさ★★★☆☆
文章力★★☆☆☆
ストーリー★★★★☆

概要
 2010年4月よりテレビアニメ化が決定している同タイトルの原作第一巻。著者の松智洋氏はこれがライトノベル初作品となるが、新人というわけではないようだ。本作のあとがきで普段は別ペンネームでゲームやアニメ、漫画の原作などを手がけているとあり、実際テレビアニメ『クイーンズブレイド 流浪の戦士』ではシリーズ構成としてクレジットされている(よしもときんじ氏と連名)。

 脚本家がライトノベルを手がけることは過去にもある。例えば同スーパーダッシュ文庫では川崎ヒロユキ氏が『はっぴぃセブン』を執筆していた。ちなみに『はっぴぃセブン』も2005年秋にテレビアニメ化されている。

 本シリーズの発刊ペースは早く、2008年10月末の第1巻から2009年11月末の時点で既に第7巻を数える。概ね2ヶ月に1冊程度の発刊ペースだ。『迷い猫オーバーラン!』のアニメ公式サイトによればテレビアニメ版のシリーズ構成も松智洋氏が担当することになっており、氏の執筆速度は相当早い部類であると思われる。

 イラストのぺこ氏は美少女ゲームの原画家だ。ブルームハンドルというブランドで、これまでに『はぴとら』『はぴとら外伝』の2作品の原画を担当している。

 またテレビアニメ化に先駆け、コミック版がジャンプスクエアで連載されている。作画は『To LOVEる -とらぶる-』の矢吹健太朗氏が担当。矢吹健太朗氏の描く少女の可愛さには定評があり期待が高まる。

あらすじ
 都築巧の家は洋菓子店『ストレイキャッツ』を営んでいる。従業員は店長で姉の乙女と、巧の幼なじみでバイトの芹沢文乃、そして巧の3人だけ。しかもただ一人のパティシエールである乙女の腕前は微妙で経営状態はかんばしくない。
 にも関わらず人助けが趣味な乙女は、素性のわからない美少女を拾ってきてしまい巧と文乃は唖然とする。個性的な面々に騒がしい日々を送る彼らだが、その過去にはある秘密があったのだった。
総評
 自分も含め、多くの人はテレビアニメ化によって本作に興味を持つことになると思われるが、テレビアニメを先取りしたい場合を除いては、アニメ版や漫画版を最初の情報源とする方が幸せだろう。自分は2巻以降未読だが、シリーズ中本作に限って言えば文章上のミスが多く、気持ちよく読めるとは言い難い。

 作品の方向性は、一言で言えば感動系美少女ゲームのノリである。人の生死に関わるようなストーリーではないが家族をテーマとしており、感動系美少女ゲームをプレイする人であればKeyの『CLANNAD』などと重なる部分を感じるだろう。

 本作を高く評価できるかどうかは、偏に主人公『都築巧』に感情移入できるかという点にかかっている。幼なじみの『芹沢文乃』と学園理事長の娘『梅の森千世』はツンというよりサディストであり、特に文乃の言葉は読者がよほどのマゾヒストでなければ不快に思うであろう汚い言葉だ。そこを克服できるのであれば、感動系としては妥協点を与えられる結末を評価することができ、また続刊への期待も高めることができる。




バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)
バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)井上堅二 

エンターブレイン 2007-01-29
売り上げランキング : 143

おすすめ平均 star
starこれはおもしろい
star思ったより良作
star合わない

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

当サイトのおすすめ度
★★★★☆
湿っぽい話が嫌いで、軽いノリが好きな人におすすめ







イラスト★★★★☆
キャラクター★★★★★
読みやすさ★★★★★
文章力★★★★☆
ストーリー★★★☆☆

概要
 2009年の時点で「文学少女」シリーズと並んでファミ通文庫の看板的作品となっている「バカとテストと召喚獣」の第1巻。第8回えんため大賞編集部特別賞受賞作。愛称は「バカテス」。
 2010年1月よりテレビアニメが放送されている他、少年エースで漫画が連載されるなどメディアミックス展開されている。
あらすじ
 吉井明久の通う文月学園では、進級テストの成績によりクラス分けが行われる。最上位のAクラスはリクライニングシートや冷暖房完備と最高の設備で授業を受けられるが、最下位のFクラスでは壊れかけた卓袱台と腐った畳だけ。
 バカである明久がFクラスに振り分けされたのは当然だが、明久が想いを寄せる姫路瑞希は本来であればAクラスの実力者。明久は瑞希の為にクラス代表の坂本雄二をたきつけ、上位クラスに教室を賭けた対クラス戦争を始める。
 文月学園の対クラス戦争、それは学園が開発した試験召喚獣による「試験召喚戦争」だった!
総評
 自分が購入した時点で既に第16刷を数えており人気の高さが伺える。昨年放送終了した生徒会の一存のテレビアニメ第3話においても美夏が「バカテスとかアニメにぴったりだろ」と発言しており、アニメ化は時間の問題だったようだ。

 テレビアニメにおける1~2話に相当するが、テレビアニメ版では尺の関係かいくつかのエピソードが省略されたほか、召喚戦争の内容も変更されている。作品の方向性を大きく損なうものではないものの、召喚戦争の駆け引き的なものがほぼ描かれていないので、テレビアニメより本作の方が内容が濃いと言える。

 本作はタイトル通り「バカ」と「テスト」と「召喚獣」をテーマにしているが、実際のところ本作の魅力となっているのは「バカ」な主人公の明久のキャラクターと、それを取り巻くキャラクターの個性であり「テスト」と「召喚獣」の部分はそれを動かすための舞台にすぎない。そこを勘違いして召喚戦争における戦略や戦術に期待すると、期待はずれという答えを出してしまうので注意したい。

 全編を通して明るく、頻繁にボケとツッコミが入る楽しい作品になっている。どのキャラクターも嫌味がなく気持ちよく読了することができた。

 特に主人公明久のバカで明るいところが爽快で、この作品のカラーとなっている。ラブコメではあるものの、萌えや気恥しさを楽しむというよりはバカ騒ぎを楽しむ、そんな作品だ。